2016年7月14日木曜日

160702 第一回「めざせ!筑波山地域ジオパーク」を触って学ぼう in 地質標本館

160702
第一回 「めざせ!筑波山地域ジオパーク」を触って学ぼう in 地質標本館

筑ジオカフェにご一緒しているブラインドの半田さんと標本館を訪問させてもらうご相談をしたことがきっかけとなり、産総研地質情報研究部門の住田さんと、立体模型をつくっておられる地質標本館・地球技研の芝原さん、地質標本館の利光館長さんと酒井さん、みなさんのご協力で、筑波山地域ジオパーク推進協議会ジオネットワークつくばと共同で開催しました。

展示室の吹き抜け天井にある、‘地下1000キロから見上げた日本列島と震源分布‘の模型の下で、太平洋から日本海側にいくほど震源が深くなるとの解説と
いっしょに、東日本の海底も含めた立体模型を触察。プレートが沈み込まれる側(日本の陸地側)が押されて切り立った崖のようになっている海溝の深さを立体模型で感じました。

岩石標本で重さの違いを確認中。隣には立体模型
岩石の比重の違いがプレートの沈み込みに関係しているとのお話で、大きさが同じ2類の岩石実物標本も用意いただいて体感。左右で持つと微妙すぎて違うのかわからないほどですが、片手で順番に持つと、確かに、大きさは同じでも重さが違うことがよくわかりました。

立体模型を触察で観察していた半田さん、海底部分に高くぽつぽつと存在する山の存在に「これは・・何ですか?」。
みると、海底からグンっと大きく飛び出した、陸上ではありえない程鋭角な‘山‘があることに私もビックリし「これ、島ですか?」と質問すると、海上には出ていない、海の中にある山、とのことで2度目のびっくり。
平面地図で色が違ってたとしても気に留めなかったと思う、立体模型だからこその新たな発見でした。

大きな大きな日本列島地質模型のある第1展示室へ移動。
日本の地質を、周辺の海側からぐるりと俯瞰しながら学べる展示を、今回、半田さんは手を伸ばして関東地方を触察。  
※目で見る展示物を、標本館の方の許可をいただいて触察しています。 
大きな大きな立体地図の展示、関東周辺を触察中。
 広い広い関東平野を北にたどるとぽこっと筑波山にあたります。
「大きい!」と一声。でもそのあと、富士山をさわってからもう一度筑波山を触ると、「そうか~やはり低いね」。
平野から‘みる‘とそびえ立つ筑波山、ということ、関東平野の広さを触察で実感されたようです。

同展示室内の「郷土の地質」展示では、設置してある関東平野部分の立体模型と、より筑波山地域部分を拡大した、芝原さん作成の立体模型を触察。
12枚あわせると1m×1.5m近くある立体地形図。筑波山を触察中。

筑波山の形・・・加波山(かばさん)や宝篋山(ほうきょうさん)と続く‘山塊‘であることや、男体山女体山(なんたいさんにょたいさん)の二つの峰があることを確認。

注目は筑波山南のすそのへ広がる傾斜面。
山頂からふもとへ向けてたどると、途中で傾斜角度がかわることを触察で確認!山の上部と中腹部の岩石の違いが角度の違いとして現れているとのことでした。

そのお話から、筑波山を構成する岩石について、実物で手触りや重さを確認しながら、それぞれについて詳しい解説と、含まれる鉱物のお話も頂きました。

 いろいろな岩石や鉱物を手にとって触察
花崗岩(かこうがん)が風化した真砂土(まさど)は力を入れるとポロポロと崩れてしまいました。

地質年代の説明では、2種類の紐で46億年と6億年の‘年表‘を表すものを用意頂き、わかりやすく筑波山の形成史もお話頂きました。

普段は触れない標本や展示物を、今回は、特別に触らせていただくことができました。
年表の紐や、地形の立体模型、岩石や鉱物の実物や結晶模型など等、どうしたらわかりやすく伝わるかとても工夫された触察とあわせ、専門家の方たちの詳しい解説を聞きながら、室内なのに全身でジオを感じ、深く学ぶ時間となりました。

最後に、精巧な型に石膏を流し込んで作るミニ筑波山地形模型の作成を、利光館長のご指導で体験。
固まるのを待つ間には今日の企画について活発な意見交換もあり、今後も何かできるのではないかというワクワク感を共有しておわりました。

テーブルを囲んで模型を作りながら談話中
お忙しいところ、綿密な計画をたてご準備くださったみなさまに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました!

常陽新聞、鈴木宏子さんが取材して記事にしてくださいました。
ありがとうございました。
今回もテキスト化の許諾を頂きましてこちらに転記します。

常陽新聞 2016年7月4日付8面に掲載

視覚障害者ら
触ってジオの魅力学ぶ
つくばの地質標本館で10人参加  (←常陽新聞スマートフォン版で写真がみられます)

筑波山地域ジオパークの魅力を、触って学ぶ企画が2日、つくば市東の地質標本館(産業技術総合研究所内)で開かれた。視覚障害者ら約10人が参加し、研究者の説明を受けながら、地形の立体模型を触ったり、岩石を触って肌触りや重さを確かめながら、筑波山や関東平野の成り立ちを学んだ。
 「『めざせ!筑波山地域ジオパーク』を触って学ぼうin地質標本館」と題した企画で、見るだけでなく、触ったり、音を聞いたり、匂いをかぐなど五感で楽しむユニバーサルミュージアムの普及などに取り組んでいる市民団体「つくばバリアフリー学習会」(北村まさみ代表)が、筑波山地域ジオパーク推進協議会(事務局つくば市)、ジオネットワークつくば(事務局地質標本館内)と開催した。
 参加者は、日本列島や関東平野、筑波山などさまざまな立体模型を触りながら「関東平野が本当に平らでびっくりした。どうしたらこんなに平らな平野ができるのか」などと矢継ぎ早に質問。
 ユーラシア大陸の東端にあった日本列島が大陸から分かれ、温暖な気候と寒冷な気候を繰り返し海面が上昇したり下降したりしながら、だだっ広い関東平野ができたことなどダイナミックな大地の動きを学んだ。
 さらに筑波山の地形の立体模型を触って、山頂付近の急な傾斜と、ふもとのなだらかな傾斜の違いを確認。それぞれを構成している岩石を触ったり、重さの違いを確かめたりしながら、山頂付近の岩は重く、ふもとの岩は軽く崩れやすいため、筑波山は高い山にならなかったことなどを学んだ。
 参加した視覚障害者で筑波大学人間系助教の半田こづえさんは「山の高さや形は、山をつくっている岩の性質によって決まるなど、これまで疑問に思っていたことが一度に解けた。すごく感動した。見方が深まり、自分が住んでいる地域や地球全体についても新たな関心をもてた」と話していた。
 ジオネットワークつくば事務局で産総研地質調査総合センターの住田達哉主任研究員は「用意した(立体模型や岩石などの)教材を好意的に受け止めてもらえ、ありがたく勇気づけられた。今後、受け入れ態勢をさらに考えていきたい。ジオパークの魅力をハンディをもった人にも広げるきっかけになれば」と話している。(鈴木宏子)
 ○この記事は常陽新聞より特別に許可を得て文章のみを転載しております