2012年3月18日日曜日

3月10日(土)
幸和義肢研究所 の新社屋を見学・ご案内いただきました。

幸和義肢の方の案内を聞く

広い敷地の入り口から駐車場、建物入り口まで段差や階段は0。
建物正面全体の軒を広くとり、車で来た車イスユーザーも雨の日も濡れずに建物に入れます。

全面ガラス張りの玄関ロビー内から駐車場方向の写真

建物をつくる際のコンセプトは「誰にとってもやさしい建物」。
つくる前には優れたUD/BFな施設・建物をたくさん見学、それらの良いところを取り入れたのだそうです。

玄関ロビーの奥はガラス張り。
中では、義肢や車イスの職人さんたちがそれぞれのお仕事作業中。「職人たちの作業風景をよくみてもらおう」との考えからだそうです。

中に入って見せていただきました。

島ごとに成型や靴の皮貼りなどなどの作業をしている作業場

一人一人にあわせた靴や義足や車イスが、それぞれたくさんの工程を経てつくられています。
一人一人に合わせた=一つ一つ違うものをつくる、のは、根性がないと続けられない、まさに「ものづくり」の職人さんたちの世界。

採寸や試着をする部屋や、試しで歩いてみるコース、
スポーツ用義足を試す陸上競技で使う床材なども設置されていました。
義足や杖でいろんな道の状態を試してみるためのコース(屋外)

福祉機器の展示室では、多様な車イスや福祉支援グッズを拝見。
展示場にあるさまざまな車イスのお話を聞く

おどろいたのは、車イスユーザーの職人が車イスのメンテナンスができるようつくった、特注のリフト。
1メートル四方の台に車イスが乗り、台全体がリフトで1メートル以上上がっている

「これまで車イスの足元や裏側を見るのが難しかったけれど、リフトのおかげで一台全体を自分で見られるので良い」との車イスユーザーの職人さんの話でした。

このほかにも、どの部屋もコンセントが机の真上の天井からぶら下がり床にコードがなく、また、作業場でいろいろなものが必要でも床上に散乱することなく通路が確保されるなど、車イスユーザーも作業しやすい環境でした。コードの這わない、床上も整頓された作業場は、車イスユーザーのためということだけでなく、誰にとっても作業しやすく、整理整頓されて働きやすいんじゃないか、見た目もきれいだなと思いました。

他には、シューフィッターさんが一人一人の足を見て靴の中敷をつくってくれる工房や補聴器の部屋など、ありました。

職人さんたちが働く現場を見られることは何より貴重なことですが、ユニバーサルデザインの建物として、しかも、車イスユーザーが「働く」こともきちんと考えてつくられている『見本』のような場所と思いました。
福祉機器展示場には、入浴や移乗をサポートするグッズや、自分で食べることをサポートするグッズなども、実際手にとって見ることが出来るというところも、貴重な場所と思いました。

震災直後から被災地支援で出来ることは何かを考えて取り組み、現在は、作業場ででる「銅くず」を集めて換金し被災地を支援する、ということをしているそうです。職人さんたちもこれまでゴミとまざって廃棄していたものを拾うという、一手間かかることだけれど、積極的に取り組んでいるとのことでした。

幸和さん、ありがとうございました!

参加者の感想

・すごい技術で一人一人に合わせてつくっているのがよくわかった。
つくば福祉機器展やこちらの常設の展示などは、東京などにいけない人も居るので、近くで見られることが大切なので とても重要なことで有り難いと思う。
働く人にとっても良い環境を、というのがすごい。見学できて良い経験が出来た。ありがとうございました。

・道路をはいったところから玄関までフルフラットというのがすごい。
 どういう仕組みで可能だったのか?いろんな意味の良い見本と思う。

・義肢の工房いろいろみたが、ここまできれいで全体的にゆったり、展示場もゆったりみられるところがあるのはめずらしい。

・座面があがる車イスがあることに驚いた。

2012年3月2日金曜日

2011.11/12広瀬浩二郎さん「手学問のすゝめ」

共催講座    バリアフリーいっしょに楽習会
~さわっておどろく「手学問のすゝめ」~ 

筑波学院大学

2011年11月12日(土)13:00~15:30
筑波学院大学の学生さん4人を含め、25名の参加で行いました。

ロの字型のテーブルの周りに参加者が座り、囲まれた中で広瀬さんがお話中

広瀬さん中心で開催された、大阪みんぱくでの「ユニバーサルミュージアム」についてのシンポジウムのお話では、耳の不自由な方の参加申し込みがあり、方法として

『遠隔情報システム』
会場の音声をBluetoothマイクで遠隔地(その時は沖縄と長野)に送り、PC要約したものを会場で参加者が持つiphoneなどに表示する

方法だったそうです。

そのシンポジウム当日に、それまでメールでやりとりをしていた全盲の広瀬さんと耳の不自由な方が、会場で直接対面したときには方法がなくてやりとりが少し難しかった、メールでは「普通」に会話が出来るのだいうことに改めて気づいた、とのお話がありました。

お話しする広瀬さん

広瀬さんの楽しく軽快なトークの中、示唆に富むお話や考えさせられる話題がたくさんありました。

机をまわって参加者にモノをわたす広瀬さん

アイマスクが配られ、広瀬さん手ずから参加者に「鑑賞物」を配布。

アイマスクをしてモノを鑑賞する男子学生さん


参加者は交代でそれが何なのかを、さわって鑑賞、当ててました。

アイマスクをしたまま、音楽を鑑賞も、しました。
全身を耳にしてみなさん聞き入っていました。

参加者の感想
①いかがでしたか。
②特に印象に残ったことがあれば教えてください。

男性20代つくば市
①私自身視覚障害者(弱視)で、広瀬先生の話で共感できるところがたくさんありました。自分の盲学校時代を懐かしみながら聞くことが出来、とても有意義な時間を過ごせました。本当にありがとうございました。

女性40代つくば市
①先生が話し上手で楽しかったです。初めて参加しましたが、「触覚」でモノの形などを認識するのって難しいですね。
②自分の触覚の貧しさ
(さわっても全くなんだか想像がつかないものもありました)

女性40代つくば市
①今回3回目。毎回少しずつ内容が違って、毎回、イマジネーションが広がります、楽しかったです。
②全身でハグして見る!!すてきです!

女性40代つくば市
②・視覚障害者と聴覚障害者のコミュニケーションの話。
・さわって想像することは知的なこと。

男性10代土浦市
①楽しかったです。アイマスクをした人と一緒に歩くという体験はしたことがあったのですが、モノの手ざわりから視覚について考える体験は新鮮でした。
②美術館の話が出たときに、視覚がない状態でどう楽しめばいいのか、そういうことを考えると難しくなるが、考えた事がないことを考えるのは楽しかった。

男性40代石岡市
①視覚外の感覚は日常でも頼りにしているな、と改めて思いました。
②発想を楽しんでおられるのが印象的。

女性40代石岡市
①楽しいワークショップでした。アイマスク一つで触覚が研ぎ澄まされる感じがしました。
②音球がとても不思議なものに感じました。アイマスクをとったら想像と全く違うものだったのでびっくりしました。

男性20代東京
①著書を読んでから参加しましたが、実際に体験してはじめてわかることが多いと感じました。
②みえないところにとても多くの重要な情報があるということ。

男性10代水戸市
①アイマスクをしてさわってみるのが予想以上に面白かった。
②親指ピアノの手作り感がすごかったこと。

男性20代千葉県栄市
①日ごろから「視覚に依存した生活」をしていることが多いため、さわって楽しんだり、見えない中での音楽はとても新鮮でした。
②講演会後半、見えない中でもの(対象物)を触ると。
 見れば一瞬、というのが触ると全然分からなかったです。

男性10代阿見町
①さわってみて想像をすることがとても難しいことだと思いました。
②いろいろなところを触る感じが、すみからすみまで探ろうというような感じと似ているところが印象に残りました。

後日、参加してくれた筑波学院大の学生さんの体験・感想文が
常陽新聞に掲載されました。(2/16付常陽新聞から)

「さわる文化」に触れて

経営情報学科1年 土田 康平

筑波学院大学で昨年の11月12日に開催された、つくば市民大学・つくばバリアフリー学習会共催講座「さわっておどろく『手学問のすすめ』」に参加しました。実践科目の活動としては講座への参加が主で、私が協力できたのは、参加者のために案内用の掲示をすることなど会場の準備や後片付けだけでしたが、少しでも役に立つことができてよかったと思います。
 講座では最初に講師の広瀬浩二郎先生の「さわる文化」という講演を聴きました。先生は13歳のときに失明されたということですが、京都大学に進学し、現在は国立民族学博物館に準教授として勤務しておられます。著書も多く、大変な努力家だということがわかります。「目は見えなくなったが、その代わりにさわって見る豊かな文化に出会っている。目が見える人にこそそうした体験をしてほしい」と話されました。「目の見えない人にとって、芸術鑑賞とは作品に触れることだが、それができない美術・博物館が多く、やさしくない」とうかがって、触れる事のできる展示が増えていくといいと思いました。また先生が、「『握手』はコミュニケーションとしてとても重要だ」ということを話されたのが強く印象に残っています。
その後行われた「ワークショップ」では、アイマスクをして実際に物に触れたり、音楽を聴いたりしました。目で見る事ができないので、手で形や素材などを感じ取りながら、想像力を働かせて触れたものを理解しなければなりませんでした。手でさわって、時間をかけて物それ自体を感じるという、「さわる文化」を体験しました。音楽も、楽器や演奏者が見えないので、音を集中して聞くことになりました。
 視覚に障害をもつ方たちのことを理解し、自然に交流できるようになりたいと、このプログラムを選び参加しました。いつもは目に頼っていたことを手や耳に意識を集中させて感じるという今回の体験を通して、目が見えないという事とはどういう感じなのか、少しですがわかってきました。私たちの周りにいる視覚障害者の人やお年寄りに何かサポートする時役に立つ経験でした。このような講座があることをもっと多くの人達に知ってもらって、視覚に障害のある方たちと交流する機会が増えていくといいと思います。