2009年12月25日金曜日

12/5インクルーシブデザインワークショップとは?(2)

午前のお話の実践編として
午後は「バンソウコウ」ワークショップ。

各班1名のリードユーザー(目の不自由な方)に6人ずつ3グループで開始。

はじめにグループ内仲良くなるための「しりとり自己紹介」。
最後に各班3分で作品をプレゼンするのを踏まえながら、
試作品作成、プレゼンの仕方までをみんなで考えていきました。

プレゼンで発表する内容

1.アイデア商品名
2.きっかけとなった気づき
3.巻き込めるユーザー
4.試作品(具体的につくる)

はじめにまず
リードユーザーのこれまでのバンソウコウに関する経験を聞いたり、
実際にバンソウコウを使っている様子をじっくり観察。
使い方をじっくり観察
気づいたことを全部、小さな気づきをすべて付箋に書き留め、
次に共通の気づきを分類、出てきた課題と、対応策を考えていきます。

リードユーザーの「傷口の位置がよくわからない」という経験から、
「それって晴眼者が見えにくいところの傷に貼るときも同じだよね」と
実は目の不自由な方だけでなく自分たちも同じ不便があることに気づきます。

箱の開け閉め、ゴミの問題、貼り具合の問題・・・
それが「当たり前」で、これまでなんとなく使っていたバンソウコウ
ですがこうなっていたらもっといいよね、とか、
こんなのはどう?など次々、グループで活発に意見が出ました。
グループの様子。付箋を分類しながら気づきを共有します
それを元に手を動かして「模型」を創っていきます。
みなさん真剣にバンソウコウに向き合いつつ、会場は笑い声で
いっぱい。
下を向いて真剣に手にバンソウコウを貼ってみている二人
そして各班のプレゼン。
アイデアがたくさん出て5つも試作品を作った班
空き缶を使った「エアがでて傷の位置が分かる商品」商品名『背中怪我した人』をプレゼン中
うたい文句もつくり、視覚的にも工夫したプレゼン
セロテープ状になったバンソウコウ、商品名『フリーペッタンコ』。画用紙にうたい文句を書いたものを示しつつ、実演しながらプレゼン中。
テレビショッピングを真似た掛け合いのプレゼンをする
グループ。。
商品名『ペタリン膏』を3人でプレゼン中
みんなの気づきから、いろいろ考えて試作品やプレゼンを
工夫して作ることがこんなに楽しくて、また、みんなで知恵を
出し合えばできるものなんだ、
ということ、みんなで実感しました。

ws終了後、ふりかえりとして、「では結局IDWSとは何?」
として、
今日一日で感じたこと、思ったことを付箋に書いてグループで
話しあいました。

・工夫を考える、ともにつくる楽しさ
・新しい視点との出会い
・アイデア・知恵の出し合い、伝える
・カテゴリーでなく原点がある
・考え方は「雪だるま式」
・出来上がったものに無理がない
・デザインによって線引きされない
・さまざまな目線からの意見を共有、その視点からも
 見られるようになる
・多様な状況の人の意見を聞き、共有できる
・年・性別・仕事の違いを超えて、一人では思いも着かない
 ことを思いつける
・思い込みに対する気づき
・三本の矢なら折れない
・不便な人と自分を分けないで巻き込む
・多様な人と居ることで知る自分の不便
 (実はみんなが障害者)
・自分を含めたみんなのためのデザイン
・誰も排除しないものづくり
・分ける・排除でなく、巻き込む、が大事な場所
・平等参加
・一人から出発して共有していくWS
・井戸端デザイン工房
・地引網的、ごった煮的おいしいものが出来る
 =全ての人を幸せにするデザイン

インクルーシブデザインとは、を一言で表すのは難しい(>_<)
でも体験した皆さんの「つぶやき」たちが
よく表していると思います。

有意義な、楽しい学びの時間を共有できた一日でした。

頂いた感想
①講演会・ワークショップはいかがでしたか?
②特に印象に残ったことを教えてください。

①シマウマのワークショップ、面白くて参考になりました。
 自分がいかに感覚でとらえているかを思い知らされました。
②障害や高齢の境目をデザインに求めるという概念が
 新鮮でした。
 見方次第でこんなに変わるなんて!
(20代男性 つくば市 午前のみ)

①大変良い経験をしました。
 塩瀬さんのWSは2回目ですが、2回目では聴けなかった
 レクチャーやその後の取り組みについて、効用の広さを
 学ぶ事ができた。
②動物園のコンペの内容
(50代男性 神奈川県横浜市)

①先入観ではなく、周りを巻き込んで幸せ(みんなが)に
 なれるようなデザインを共に作っていく事が
 大切だなぁと思った。
 全てのことは共同作業から行われており、それが成立しない
 事が現時点では多いように思うのでそれは残念に思う。
 WSでは、まったく知らない人同士でしたが視点の違いで
 考え方が違うところが新鮮だった。
②シマウマの絵
 いかにうまく伝えられなかったのかがわかったし
 よくみていなかったかも。
(30代女性 千葉県我孫子市)

①参加してよかった、出られる限りはまた来たい。
 来るたびに学ぶことがある。
②ワークショップ。
 当事者の意見を聞いてモノを作ることの重要性を強く感じた。
 先生のお話も勉強になった。
(70代男性 土浦市 リードユーザーを担当)

①たいへん楽しく、新しい気づきが多かったです。
 ものづくりを通してのインクルーシブデザインの理解手法は
 目からうろこでした。
②公共施設のバリアフリーについて。
 動物園のコンペ作品もすばらしかったです。
(30代女性 つくば市)

①面白かった!午前も、午後も、とても面白かったです。
 同僚にも教えたいです。
②「他人事だから」という言葉が印象に残りました。
 障害の有無関係なく同じ目線で取り組むのははじめてだった
 のでとてもよい体験でした。
 こちらが助けられたような気もします・・・
(30代女性 東京都中央区)

①コミュニケーションは共同作業である、が印象的でした。
②いろいろな人たちと接するなかで「気づき」が大切と
 感じました。
(40代女性 つくば市)

①『他人のため』に、うそくささを感じていたので、
 自分と相手が同じところで過ごせるための考え方がいいなと
 思いました。
②自分がするかどうか、自分の家においてもいいかどうか、
 の視点を持つこと。
(20代女性 つくば市(午前のみ))

最後に塩瀬さんと各班のみんなで記念写真を撮りました(^-^)

『闇夜のバンソウコウ』『片手でエイド』『パットサワラーズ』
『背中怪我した人』『パットばん』を考案したA班のみなさん
A班の集合写真
『フリーペッタンコ』を考えたB班のみなさん
B班の集合写真
『ペタリン膏』を考えたC班のみなさん
C班の集合写真
みなさんありがとうございました!!

12/5インクルーシブデザインワークショップとは?(1)

12/5(土)の講座
つくば市民大学 講座案内
は、20名の方の参加で行いました。

講師の京都大学インクルーシブデザインユニットの塩瀬隆之さん

は超お忙しい中、朝一の新幹線で京都から会場入り。
本当にありがとうございました。

会場を回って話をする塩瀬さん
午前講演
はじめに、
『動物園』が今年のテーマの、
京都市みやこユニバーサルデザインコンペ
http://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000051996.html
で京都大学インクルーシブデザインユニットが見事大賞を受賞した『みんなをまきこむ動物園』のプレゼンをたどりながらインクルーシブデザインとは何か?のお話がありました。

エクスクルーシブ(排除・出て行ってください)
の反対語が
インクルーシブ(包摂・巻き込む、入ってきてください)。

グループで障害のある方と動物園を回って気づきを共有し、そこから、こうなっていたら楽しいよね、もしもうちょっとこうなってたら車イスからも、こどもの目線からも動物がよく見えるよね、こんな工夫があると面白いよね、いろんな人に楽しんでもらえるよね~という動物園を考えたそうです。

人と動物の目線の違いへの気づきから、京都の夏の風物詩「床」を借りて、キリンの目線の床を作りお酒を楽しむ、なんてアイデアもでたそうです。

フツウだとモノも施設もデザイナーが考えるけれど、インクルーシブデザインでは、いろんな人とみんなでまわって楽しかったこと、こうなってたら楽しいを出し合うことで、これまでと根底から違う提案ができていると思う、とのお話でした。

もう一つ。
うまれつきの全盲の方と動物園を回ったグループがシマウマの前に来たときのこと・・・

グループの人「シマウマがいます」
全盲の人「シマウマの縞ってどんな縞?」
グループの人「えええっ!?え~と、え~っと・・・」

僕が知っているから説明してあげるよ。
と思ってブラインドの方と歩き始めるが実は全然きちんと見ていなかったことに気づく・・。

            ・・・・・

これと似た状況・・・
グループで、後ろをむいている人に、シマウマの写真をみながらどんな縞かをみんなで説明し、その人にシマウマの絵を書いてもらう、というワークショップをしました。

どのグループも楽しそうにわいわい。
でも出来上がった絵はシマウマとは程遠い新種の生命体・・・!?

シマウマの映像に背を向けた人が、他の人からの説明を聞きながらシマウマの絵を描いている

こんなにシマウマの体をじっくりと見る機会もありません。
シマウマの顔部分の複雑な模様、お腹部分には縞がないこと・・・新しい発見がたくさん、シマウマの見方がこれまでと変わります。
見えない人に説明して「あげる」というのがいかにおこがましい考えだったか。
いかにシマウマをきちんと見ていなかったか。
口頭で説明する難しさ。
説明するために「触るくらいゆっくり細かく見る」ことでシマウマについて新しい発見がある・・・。

見えない人と一緒に居ることで気づかされることがあり、新しい感動があり、見方が変わる。
こういうのができるのもインクルーシブデザインの力、というお話でした。

          ・・・・

デザイナーだけで思いつけないことをみんなの力で出す、素朴に感じる疑問、工夫を集めただけでもこれだけのものが出来るのだから、みなさんにもどんどんやっていただこう、ということで、インクルーシブデザインワークショップをあちこちで行ってきていて、今回で記念すべき!60回だそうです。

小学校でのワークショップ、京都駅で待ち合わせをしてみるWSなど等、豊富な経験と事例をお話くださいました。


disable=障害のある人 と
disabled=障害をこうむっている人
という考え方の違いについて。

老眼になったからみえない・・・ではなく、最初から文字が大きければ見えて、境・不自由を感じずに済むはず。
高齢者とは何歳からか、線引きが出来ないように、障害者も線引きが出来ない。
ある行為ができなくなって不便を感じるようになることが「障害」なわけで、もともとが良いデザインだったら・・・

「できないこと」を個人の認知や身体のせいにするのではなく、理由をデザインに求めるのが「disabled」の考え方。
人の行動・行為はまわりの環境・デザインによって変わる。
だから、デザインをしっかり変えていくことが大事、とのお話でした。

よく尋ねられる、
ID(インクルーシブデザイン)
UD(ユニバーサルデザイン)と何がどうちがうのか?については。

UDでもIDでも、優秀な個人デザイナーが作ったものでも何でも、みんなが使いやすいものが出来るならば何でも良いと思う。

みんなが使いやすい
 =使ったときに境界線(排除の線)が見えない、感じない、
  そこから少しでも遠ざかっていること、
  一人でも多くの人が使いやすいもの、
そこを目指すことが大事。
パワーポイントの画面の写真。箇条書きで。ユニバーサルとインクルーシブは何が違う?みんなにつかいやすいデザイン=結果として誰もが使いにくい事がある。最適解が唯一つ存在するという思い込み=人の多様さは想像を絶する→個からはじまり、いつでも個に立ち戻る事ができるユニバーサルデザインといえる。
IDでは、リードユーザーという特定の一人から出発。
最初から多種多様な障害のある人に対応したものをつくろうと考えるのは大変。

利用するみんな、というのは、実は個人の集合体だから「みんなに向けて」のデザイン程、個人から出発するのが大事との考え。

これまでエクスクルード(排除)されてきたユーザーを実際に巻き込んでその個人と向き合う。
その先で、一人でも二人でも多くの人が使いやすいものを「ともに」考える。
そのデザインの方法・プロセスとしてIDがある。

その際「○○さんのために」という姿勢は「助ける人ー助けられる人」という構図を暗に仮定し、『他人事』で考えてしまうので、それよりも「○○さんとともに」という姿勢で、自分でもそれを使いたいと思うかどうか、を考えながら、具体的なモノを実際に作ってみるところまでワークショップでやってみる事が大事。

その過程自体も、必要な情報はきちんとグループ内で共有する(情報補償)、違う意見を尊重する、また、先入観を捨てて、目の前で見ているところでその人は何が出来て何が難しいのかを判断し、方法を一緒に見つけていくことで誰も排除しない=インクルーシブなものにすることが大事、とのお話でした。